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いとおしいモノといっしょ。〜『カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)』 [■ ネットあれこれ Web]

カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)

カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)

  • 作者: 山下 哲
  • 出版社/メーカー: アスペクト
  • 発売日: 2005/02/26
  • メディア: 単行本




【平熱が上がる。】

『ほぼ日刊イトイ新聞』に
『カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)』というコンテンツがあります。

山下哲さん(41歳:連載開始2003年12月時点。現在42歳)
ご自身が「カワイイ」と思われるものを公開したり、
「カワイイもの」とともにある「おじさん」のもとへ行ったり、
縦横無尽に東奔西走。
脚本家としての力量炸裂で
多種多様の「カワイイもの」と「おじさん」を軽快に紹介します。

登場する「カワイイもの」に目を奪われることも多々ありますが、
「おじさん」と「カワイイもの」との距離感や、
インタビュアーの山下さんの反応、見方、距離の変化が印象に残ります。
小気味よく展開されていく光景を
じっと見つめてしまったり、
頬が緩んだり、
小さく吹きだしてしまったり、
笑ったり、
ドキドキしたり、と、
ほのかに体温が上がります。
ほろ酔い直前のような、あの独特な感じです。

【カワイイ・かわいい・可愛い、「可愛」。】

他人が言う「カワイイ」と、私が言う「カワイイ」に、
”えもいわれぬ差”を感じたことが多々あります。

大学時代、文学系だったことも大きかったのでしょう、
”えもいわれぬ差”について、なんと説明してよいやら上手くいかない、
あの歯切れが悪い感じが気になりました。
「蓼喰う虫〜」や「価値観の違い」というのは、ちょっと違う気がしたのです。
何かにつけて「カワイイ」について、
いろいろと思い、考えていた時期がありました。

手持ちの資料で調べたところ、

和語「かほはゆし(顔映ゆし)」>「かはゆし」>「かはいい」>「かわいい」=「カワイイ」
漢語「可愛(Ku Ai)」>「かわいい」=「カワイイ」

※漢語とは、古代(漢の時代の)中国語です。

以上2種類の説が出てきました。
しげしげと眺めるうちに、
どちらも良いなぁと思えるようになって来るのです。

【所変われば意味変わる?】

和語の意味の変遷を追うと、

赤面してしまう・恥ずかしい=「動揺する」
かわいそうで見ていられない=「なんだかんだで目が離せない」
愛らしい=「見つめ・眺め続ける」

視点は「カワイイもの」に対してどんどん近づいているようです。

今度は漢語が抱える意味について追ってみます。
「愛」は、各々の持つイメージにお任せします。
私は古代日本語では「べし」を当てた助動詞「可」に注目します。


(愛する)だろう=推量
(愛)そう=意志
(愛することが)できる=可能
(愛する)はずだ=当然
(愛)せよ=命令
(愛する)のがよい=適当
(愛する)つもり=予定

=(イコール)の右側は、
古文の授業で無理矢理に暗記させられて
アレルギーになっている方がいらっしゃるかもしれませんが、
落ち着いて眺めてみてください。
どの意味をとっても、
気持ちや意識や思考が「カワイイもの」へ強めに向けられているのが分かります。

”現在の自分”ならば、意志。
”現在の自分以外”ならば、推量。
その他は、時間の遠近や意識の強弱ですね。

【いつでも、どこでも、「カワイイ」ものといっしょ。】

「カワイイ」の語源を調べたり、自分なりにイメージを整理するうちに、
浮かび上がってきたモノや心地は、
『カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)』を観ているときのモノと同じでした。

昔も今も、誰も彼も、
それぞれのいとおしいモノとの
出会いや、接近や、大切な時間があって、
出来上がった自分と”いとおしいモノ”との関わりや気持ちを
何とかして表したいんだなぁ。
これがまた照れくさかったり、難しかったりして、
懸命に取り組む一途な姿が見えて、
その姿が微笑ましくて、愛らしくて・・・
つまり、「カワイイ」のです。

そして、もう一つ。
「カワイイ」に関わってしまうと、
「カワイイ」がどんどん外側に、同心円状に波が生まれてしまうのです。
たった一つの「カワイイもの」を中心に
そこに繋がる「カワイイもの好きの人」、

その関係を外から眺めて表現をする人の「カワイイ」作品
=コンテンツ『カワイイもの好きの人々。』、

「カワイイ」作品=コンテンツを見る人とその作品=私と、この文章

・・・・・・

こうやって、あちらこちら、時代や地域を超えて
同心円状の波が生まれ、
別々の「カワイイ」と「カワイイ」が
時に触れ合って、重なり合って、混じり合っているんですね。
「かはゆし」から始まっているのに
「可愛い」という漢字が当てられている面白さ、
「可愛=Ku Ai」と「かわいい」音が似ている、呼応している心地よさにも
あぁぁぁなんだかまさしく「カワイイ」に貫かれてるよぉぉぉと
こっそり感動してしまうのです。
語源に、少なくとも2つの説が出てることも、
「それでいい」と思えるのです。

何でしょうね、このおおらかな気持ちは。
「カワイイ」の狭間で、たゆたっちゃいますね。
「カワイイ」って、「カワイイ」って・・・「カワイイ」んだよぉ!


【参考文献】************************************

■『カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)』
http://www.1101.com/kawaii/inde x.html

なんと、2005年2月28日
こちらのコンテンツがすばらしく「カワイイ」書籍になります!
詳細は以下をご覧ください。

カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)

カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)

  • 作者: 山下 哲
  • 出版社/メーカー: アスペクト
  • 発売日: 2005/02/26
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