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映画" Oppenheimer "の音の仕掛けに感じたこと。 [■ Oppenheimer (film)]




池袋のグランドシネマサンシャイン12階にある
IMAXシアターで映画鑑賞することが多いです。
スクリーンが大きく、映像が鮮明であるのも大きいのですが、
音響の迫力が素晴らしさを信頼して来ているのです。


IMAXで上映される作品は、
上映直前にカウントダウンの映像が流れるのですが、
Christopher Nolan監督作品に限り
5秒程度のIMAXのサウンドロゴの映像が流れます

Nolan監督が自身の作風に合わせて希望していると思われます。

映画" Oppenheimer "も然り。
無音で配給会社の「BITTERS END」がゆっくり表示された後
" Universal Pictures "のロゴ動画の背景に流れ始める複数の細い音、
バイオリンか、シンセサイザーか、混ぜているのか、
とにかく、か細い”A”の音が流れ始めるのです。
複数の音が次第に分けれて曲が始まります。
同時に、若いOppenheimerと、
彼が宇宙について考えている脳内のイメージが
交互に現れます。


これから作品が始まるよと、
J Robert Oppenheimerの研究の始まりは宇宙物理学だったよと
”A”の音がダブルミーニングになっていたら面白いなぁと
鑑賞するたびに思っていました。



「始まり」とは、
クラシックなどのコンサートでは、
楽団が席に着くと必ずオーボエが”A”の音を出し、
各楽器がチューニングをします。
結果的にコンサートが始まる合図になっているのです。
私には絶対音感の能力がないので頼りない予想ではあるのですが、
”A”の音は基準の音であること、
コンサートのチューニングの場面で
これから素晴らしいことが始まる!とワクワクし、
とても好きなので覚えているのです。

ただし、コンサートのチューニング時の”A”の音は
映えるように、わざと少しピッチを高くしているとのこと。
私は聴き分けられません!



" TENET "の時、
作品の冒頭ではないのですが、
National Opera of Ukraine(ウクライナ国立歌劇場)で
チューニングのシーンが襲撃で一転して物語が始まります。
作品の始まりにこのシーンを持ってくるなんて、ステキ!と思っていたのですが、
それを凌駕してきたのか?Nolan監督・・・



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冒頭を含め、様々な重低音が効いた爆音が流れます。
最初は宇宙をイメージしているシーンで、
後半は全く異なる音質の爆音がたびたび流れます。
後半のものは1945年7月16日の核実験" Trinity "のシーンで、
実験成功時のものであることが判明します。


IMAXのスピーカーから出る爆音は素晴らしく、
低音で席の背もたれを震わせます。
現実世界では大音量を聞いた後、耳鳴りや、空気圧で
耳が塞がれたような感触があったりします
残響や耳鳴り時のキーンという音が加えられているのはわかっていました。
「耳が塞がれたような感触」については、
当初、IMAXの音が大きすぎてそうなるのかと思っていましたが、
物凄く細かく「耳が塞がれたような感触」の音を巧みに入れてくることに、
終盤に気づきました。


実験後、
Oppenheimerが自分のしたことに思いを寄せるたびに
彼の中で閃光と爆音、残響、被害予測が蘇ります。
当事者からしたら、相当きついと思うのですよね・・・
被害を受けた人たち全ての中にこの感覚がある可能性もあり、
表しにくい形でもあり、
想像を絶する苦しみだと思うのです。
音の記憶を排除する方法なんてあるのだろうか・・・

Oppenheimerの内面でもあり、
被害者の内面を予測させる効果の音の表現の残酷さに
何とも言えない気持ちになりました。

同時に、
私は先述のオーケストラのチューニングの音のように
幸福な音の記憶しかない身、
ありがたみを感じる体験でもありました。




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